連載 AIのハーネスを実例でほどく | 第3回
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猫が棚へのジャンプを2〜3回しくじって、しれっと成功するくらいの時間で読めます(5分)

一度で終わらせない ── 猫のジャンプに学ぶ、AIの「直し方」

丸メガネの賢い赤ちゃんと、棚に飛び乗ろうとする猫。

前回、賢い赤ちゃんに「手」を持たせました。今回はその手で、「一発で終わらせず、自分で試して直す」話です。むずかしく言うと「ループ制御」。でも、猫が冷蔵庫の上にひょいと飛び乗るのを見たことがあれば、もう半分わかっています。今日も、ぜんぶ日常語にほどいていきます。迷子のみなさんに届きますように。

まず、前回のおさらい

ハーネスは4つの装具でした。前回ひとつめ「手(ツール接続)」のランプを点けました。今日はふたつめ、「一度で終わらせない」にいきます。

① 道具を渡す(ツール接続) ← 第2回で点灯ずみ
② 一度で終わらせない(ループ制御) ← 今日はここ
③ 何を見せ、何を隠すか(コンテキスト管理)
④ できたか確かめる(検証・ガードレール)

猫は、一発で飛ばない

猫が高い棚や冷蔵庫の上に飛び乗るところを、思い出してみてください。猫は、いきなり飛びません。まず見上げて、距離を測る。お尻をフリフリして、照準を合わせる。それから飛ぶ。もし少し足りなかったり、着地がズレたりしたら、次はもっと強く蹴る。そして数回のうちに、必ず決めます。

この一連の動きが、そのまま「ループ」です。測る → 飛ぶ → ズレを見る → 直す → また飛ぶ。猫は、一回目の失敗を恥ずかしがりません。「ちっ」みたいな顔はしますが、淡々と直して、次で決める。この潔さが、ループのいちばん大事なところです。

猫は、数回で必ず決める 乗りたい棚 ① 飛ぶ 届かない ② 直す 強く蹴る ③ また飛ぶ 決まる
一発で完璧を狙わない。飛んで、ズレを見て、直して、また飛ぶ。猫は数回で必ず決める。これがループです。

AIのループも、まったく同じ

AIに仕事をさせるときも、同じことをします。実行する → 結果を見る → 直す → また実行する。これをAI自身にくり返させる。一回目で完璧を求めない。これが「ループ制御」です。

研究の世界では、これは古くからある考え方で、「考えること(Reason)と動くこと(Act)を、交互にやらせる」のが効く、と整理されています[2]。猫が「見て(考える)→飛ぶ(動く)→また見て→また飛ぶ」をやっているのと、そっくりです。前回も触れたように、世間で「loop(ループ)」とか「ループエンジニアリング」と呼ばれているのは、この部分のことです。

AIのループ(決まるまで回す) ① 実行する ② 結果を見る ③ 直す また実行 AIが自分で 回す
人が毎回口を出さなくても、AIが自分でこの輪を回して、答えに近づいていきます。

僕が毎日、実際にやっていること

僕が Claude Code でやっていることの大半は、このループに乗っかっています。

「プロンプトすら書かずにループを回す」と言われるのは、ここです。細かい指示を毎回出すのではなく、ゴールだけ伝えて、あとはAIに輪を回させる。Anthropic も、エージェントを「自分のプロセスとツールの使い方を、自分で方向づける存在」だと説明しています[1]。猫に「冷蔵庫の上に乗りたいんだよね」とだけ伝えて、あとは本人に任せる、みたいなものです[3]

ただし、ループは魔法ではありません。間違った方向に、延々と回り続けることもある。猫なら数回であきらめたり場所を変えたりしますが、AIは「もうやめなよ」と気づきにくい。だから「いつ止めるか」「できたと言っていいか」を見張る仕組みが要ります。それが最終回の「④ できたか確かめる(検証・ガードレール)」です。ループとガードレールは、セットなんです。

今日のまとめ ── ランプ②、点灯

むずかしそうな「ループ制御」も、ほどいてみれば「猫のジャンプ」でした。一発で完璧を狙わず、試して、ズレを見て、直して、また試す。これをAI自身にやらせる。これでハーネスの2つめのランプが点きます。

ハーネスの4つのランプ ツール接続 点灯ずみ ループ制御 点灯(第3回) コンテキスト管理 次回 検証 ガードレール
2つ点きました。次回は「③ 何を見せ、何を隠すか(コンテキスト管理)」。猫でいうと、ジャンプの前に「どこを見るか」の話です。

手を持って、自分で試して直せるようになった赤ちゃんは、もうかなり頼もしい。でも、机の上が散らかっていると、せっかくのループも空回りします。次回は、その「机の上」をどう整えるか。今日も、ここまで読んでくれてありがとうございます。まだまだ道の途中、一緒にゆっくり進みましょう。

「うちの仕事、どこをループに乗せられる?」と思ったら

毎日くり返している確認・修正の往復は、たいていループに乗せられます。どの作業をAIに回させられそうか、一緒に棚卸しするところから始められます。気軽に声をかけてください。

← 第2回:AIに「手」を渡す 第4回:コンテキスト管理(準備中)

出典(英語・一次情報)

  1. Erik Schluntz & Barry Zhang, “Building Effective Agents,” Anthropic, December 19, 2024. 記事を見る ↩ 本文へ
  2. Shunyu Yao et al., “ReAct: Synergizing Reasoning and Acting in Language Models,” arXiv:2210.03629, 2022. 論文を見る ↩ 本文へ
  3. OpenAI, “A practical guide to building agents,” 2025. ガイドを見る(PDF) ↩ 本文へ